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農薬検査「検出せず」のお米と、インドのスパイス畑から考える持続可能な経済

更新日:3月8日

正直に、話したいことがある。


HARIORIは兵庫県赤穂市でヒノヒカリの米作りをしている。「自然栽培」という言葉を使いたい気持ちは正直ある。でも、私はそう言い切れない。


理由はシンプルだ。私たちの田んぼは、もともとこの土地にあったものを引き継いだものだ。イチから切り拓いたわけではない。赤穂には昔から田んぼが広がっているが、その数は年々減ってきている。私たちが耕しているのは、その中のほんの一部に過ぎない。そして田んぼは、同じ用水路の水を近隣の農家と共有している。隣の田んぼで何かを使えば、その水はいつかこちらにも流れてくる。農業とはそういうものだ。完全に「無農薬です」と宣言することは、事実として正確ではない。


それに、正直に言えば、私自身も除草剤を少量使うことがある。


そもそも、このお米は自分たちが食べるために育てている。


HARIORIの米作りは、もともと自分たち家族と、親戚や友人など限られた人たちに食べてもらうために始めたものだ。自分たちが口にするものだから、農薬は使いたくない——それが出発点にある。


それに、農薬は高価だ。大量に使えばコストが跳ね上がり、「それなら市販のお米を買った方が安い」という本末転倒な話になりかねない。食べきれない分は農業団体に卸すこともあるが、そうすると他の農家のお米と混ざってしまう。農薬を減らす努力も、できる限り手作業で雑草を取り除く手間も、そこでは関係なくなってしまう。このことは、あまり知られていない農業の現実だと思う。


雑草を放置すれば、お米が吸うはずの栄養を横取りされてしまう。だから私たちは、できる限り手で草を取る。それでも手が届かない場所がある。田んぼは正確な四角形ではない。形が複雑な場所もあれば、機械が入りにくい場所もある。人の手が届きにくいあぜ際や隅には、どうしても雑草が繁る。そういう場所に、局所的に、最小限だけ使う。土壌全体に広げるような使い方はしない。土にしみ込んでも、そこにいる生物を根絶やしにするほどの量ではない。


自然には、ある程度の浄化作用がある。微生物が分解し、水が流れ、土が吸収する。その力を信頼できる範囲で、最低限だけ使う——それが私たちのやり方だ。


でも、事実がある。


収穫したお米を、農薬の検査機関に出した。検査項目は最大。結果は——「検出せず」だった。

「無農薬」とは言えない。しかし、「検出せず」は揺るぎない事実だ。だから「検出せず」なのだと思う。断言はできないが、少なくとも私はそう考えている。


この二つの言葉の間にある誠実な距離を、私はHARIORIとして大切にしたいと思っている。消費者に「完全無農薬」と言って安心させる方が簡単かもしれない。でも、それは正確ではないし、長続きしない言葉だ。


持続可能な農業とは何か。


農林水産省の最新データでは、農業従事者の平均年齢は69.2歳に達し、担い手不足は深刻さを増している。耕作放棄地は増え続け、農地面積は年々減少している。


こうした現実の中で、「持続可能な農業」という言葉だけが独り歩きしている気がする。


ある国際環境団体は持続可能な農業を「旅路」と表現している。完璧な農業ではなく、現実を誠実に見つめながら、少しずつ向かっていくもの——この表現が、私には一番しっくりくる。


インドの大地から学んだこと。


HARIORIはスパイスの仕事に16年以上携わってきた。その間、インドの産地へ何度も足を運び、農場や加工場を自分の目で見て、信頼できると判断した業者とだけ取引を続けてきた。


産地に出向くたびに感じることがある。インドの農村では、作物が生まれる土地と、それを食べる人々の暮らしが、まだ直接つながっている。アーユルヴェーダの考え方もそうだ——食べるものと土地と体は、本来ひとつの循環の中にある。スパイスも、米も、それを育てる土壌も、切り離せない。


生産者が報われてこそ、持続可能な農業だ。これはインドの農家を見ていても、赤穂の田んぼを前にしていても、変わらない真実だと思っている。


HARIORIが考える持続可能な経済。


「持続可能な経済」を難しく語る必要はないと思っている。


私が赤穂で米を作り、インドの産地を自分の目で確かめながらスパイスと向き合う。そして、そうした食材を飲食店や消費者へつなぐ事業者のコンサルティングを行っている。自分でつくり、現場を知っているからこそ、伝えられることがある。その小さな積み重ねが途切れないこと。作る人が報われ、食べる人が安心できること。そのサイクルが来年も、10年後も続くこと——それがHARIORIにとっての持続可能な経済だ。


「検出せず」のお米は、派手ではないけれど、HARIORIの誠実さの象徴だと思っている。


あなたに正直でいたい。


HARIORIは大きな会社ではない。でも、だからこそ嘘をつかずにいられる。完全無農薬とは言えないけれど、農薬は検出されていない。インドの産地に繰り返し出向き、自分の目で確かめた業者から仕入れている。赤穂で米を作っているから、土の話ができる。


この正直さが、HARIORIの持続可能な経済の出発点だと思っている。


 
 
 

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